人気イラストレーター・夏目レモンさんが ニチデ時代に学んだ、“リアルを追求する描き方”。
【卒業生×ニチデ講師 特別対談】
■卒業生:イラストレーター 夏目レモンさん
■コミックイラスト科講師:亀井 哲治先生
-亀井先生の授業で今でも印象に残っているのは?
レモンさん:「コミックイラスト」の授業ですね。描いた作品を「スモールエス」などのイラスト誌に投稿する授業なのですが、「スチームパンク」というテーマで制作した時のことをよく覚えています。スチームパンクは「錆びた感じの表現」が必要なのですが、想像で「錆び」を描いていた時に、亀井先生から「頭の中で想像するだけでなく、実際の錆びを見に行ってみたら?」と言われたことは今でも覚えていますね。
亀井先生:実物を見て描くことはとても大切で、知識がベースにあった上に、初めて表現があると思います。自分自身が知らないものは絶対に描けないよね。もちろんネットの画像を見て描くのもアリですが、でも実物があれば、実物を見た方がいい。例えば「メイド服を着たキャラクターを描く」という課題を出した場合、男子ならメイド服はもちろん、スカートを履いたこともない学生がほとんどです。だから何となくの想像で描いてしまう。でも、ちゃんと実物を手にして、スカートの広がり方やどこにシワができるか、突っ張りができるか、縫製がどうなっているかという情報があった方が、絵を描く時にとても参考になります。
レモンさん:あと、先生の授業では作品をよく投稿やコンペに応募しましたね。
亀井先生:そうだね。制作した作品は社会に出さない限り、それは自己満足でしかないし、プロとして最終的に誰かに見せるところまでを習慣にすることが大事だと思います。
-レモンさんはどんな学生でしたか?
亀井先生:僕の授業課題では、1日2枚の作品を描いてもらっていますが、ラフ画を見れば、線の質とかで今までにどのくらい描いてきたかすぐにわかります。描き込めているかどうかというのは重要なことです。描き込める学生はわりと知識があるか、物をよく見ているかなんです。その点、入学した段階でレモンさんはある程度できていたと思います。
レモンさん:え~そうですか。嬉しい~!
亀井先生:でもパースとかは、わかっていなかったなぁと~思います(笑)。
レモンさん:課題で「身体のねじれ」を描いた時、亀井先生にOKをもらえず何度も描き直しをしました(笑)。ニチデに入学する前は「顔が可愛ければそれでいい」と思っていたし、だから高校までは逃げでバストアップしか描いていなかったです。背景まで描いて、全身を描いて、身体をねじって、なんてやったこともなかったですね。
亀井先生:みんな自分が得意なものはとことん描いてきているけど、苦手なものはなかなか描こうとしないからね。
レモンさん:それに高校時代は、人からの意見をあまり意識してこなかったですね。ココをこうしたほうがもっと良くなるよと言われて「なるほどなぁ~」と思ったのは、ニチデに来てからです。授業では描き方について「こういう理由だから」を教えてもらえます。だからもう納得!腑に落ちましたね。
-学生に教える際に心がけていることは?
亀井先生:その子の絵が、より良くなるようにする。まずそこが基本です。イラストには「あるある」ですが、カタチが崩れているからこそ、いい場合もあります。だから、絶対に自分の感覚だけで押し付けはしません。「こういうパターンもあるよ?」と実際に見せたりアドバイスして、学生たちに選択してもらっています。
-イラストレーターとして活躍している卒業生の共通点は?
亀井先生:共通していることは、たくさん描いている人ですね。そういう人は、例えばデジタルなら、板タブ(ペンタブレット)がすり減っています(笑)。描いている量に、上手さは比例しています。
-レモンさんはどのくらい絵を描きますか?
レモンさん:必ず毎日描いて、作品はよくツイッターにUPします。「かわいい」「イイね」と言ってもらえると、本当に嬉しいです。その言葉で何度も救われました。
亀井先生:上手になるコツを言うと、学校でライバルを見つけると一気に伸びますね。
レモンさん:そうですね。ニチデにはクラスに上手な学生がたくさんいました。その友達からもアドバイスをもらったり、「どうやって描いているの?」とか詳しく聞いていましたね。
-自分には「才能がない」と思っている人にアドバイスはありますか?
亀井先生:それは、きっと「才能」をはき違えています。才能はあるなしではなくて、今から磨くものだと思います。絵の上手さって、写実的、デフォルメ的など、判断基準はいろいろですから曖昧になります。例えば、写実的に描くなら、ルールを知るということ。反射光の存在を知るとかですね。才能がないのではなく、知識を身につけて才能を磨いていくことが大切だと思います。